穢れなき獣の涙
 前足があるであろう箇所には、遠い昔には鳥だった事を示す翼の名残りがわずかに残されていた。

[クルルゥ]

 カルクカンは喉を鳴らしてシレアに顔をすり寄せる。

「私の大切な友だ」

「お名前はなんていうの?」

 首を傾(かたむ)け赤いリボンを揺らしてソシエが問いかけた。

「ソーズワースという」

「かっこいいお名前ね」

「こいつを捕まえるのは苦労した」

「聞きたい!」

「あたしも!」

 シレアは双子にせがまれて側にあった丸太に腰を落とすと、続いて双子も両脇に腰掛けた。

「そうだな、あれはまだ肌寒い季節だったと思う」

 解りやすい言葉をと思案しながらゆっくりと口を開いた。




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