穢れなき獣の涙

 ──各々が部屋をあてがわれたあとシレアの部屋に集まり、ヤオーツェはようやく事実を知らされた。

「なんでそれ言ってくれなかったんだよ!?」

「すまんの。話す機会を逸していたのじゃ」

 本当に面目(めんぼく)ないとユラウスは頭を下げる。

「じいちゃんひどいよ!」

「悪かった」

 アレサも申し訳なく思い同じく頭を軽く下げる。

「もしオイラがあそこから出てなかったら、どうなってたの?」

「それは解らぬ。敵がアレサの時と同じことをしたかは謎じゃ」

 未だ敵の姿は見えず、大きな力を持つ評議会にまで目を付けられては、この先どうしたものかと深く唸る。

 むやみに拘束することはないにしても、動きづらくなることは明らかだ。

「とにかく、彼らがシレアをどうするのか。気になるところです」

「何が危険かも解ってはおらぬ様子じゃったからな」

 それは敵の正体が掴めないユラウスたちにも言えることだが、当事者としてはあまり深入りされて動きに制限をかけられてほしくはない。
< 260 / 464 >

この作品をシェア

pagetop