穢れなき獣の涙
「こちらから説明した方がいいのでは?」

「そうじゃなあ」

 思案していると、おもむろに立ち上がったシレアを見上げる。

「もう終わりかの」

「これ以上、話し合っても仕方が無いだろう」

 言って扉を開き外に出た。

「自分のことなのに、先に終わらせちゃったよ」

「あれがあやつの良いところかの」

「そうですね」

 苦笑いで応える二人にヤオーツェは首をかしげた。

 彼はまだ、シレアの性格をまるで知らないのだから仕様がない。

「じいちゃんか」

 ユラウスはふと先ほどのことを思い出し、初めて呼ばれた言葉がくすぐったくて、どうにも顔が緩んだ。





 ──外に出ると、心地よい鳥の鳴き声と暖かな日射しがシレアの目と耳をくすぐる。

 足元にも空があるというのは、とても不思議な感覚だ。

 これだけ巨大な地に足がついているというのに、妙にふわふわとしている。

「お、人間」

 背後からの声に振り返ると、銀色の髪の有翼人が立っていた。
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