穢れなき獣の涙
「奴らは仕掛けてくるかのう?」

 仕方なくユラウスが別の話題を振った。

「ユラウス殿が言ったように、ここならば安全ではないでしょうか」

「敵の正体は解らないんだろ? オイラ怖いなあ」

「何かあれば魔導師たちか、監視してる奴らが気がつくよ」

 マノサクスは危機感もなく応える。

 このなかで最も敵についてよく知るのは、ユラウスだろう。

 彼は先詠みで少なからず、敵の影は見ている。

 影という曖昧なものではあるけれど、見せつけるように現れる強大な幻影は恐怖するに充分だ。

 アレサは集落を攻撃され、ヤオーツェは巨大なバシラオを差し向けられている。

 それを思えば二人も平然とはしていられなかった。

 敵は、確実にその力を強めているとシレアは感じていた。

 大きな流れの中心にいる者だからこそ、それを感じ取れるのかもしれない。







< 268 / 464 >

この作品をシェア

pagetop