穢れなき獣の涙

 次の朝──再び呼び出されたのは、城内ではなく小さな広場だった。

 すり鉢状の円形広場は中心が舞台となっており、その舞台を取り囲むように観覧席が造られている。

 レイノムスは一番下段にある席に腰を掛け、その両脇に護衛が立っている。

 何故、彼が一人で対峙する形になっているのか。

 まずはシレアという人物に触れ、知ったのち評議会にかけようというのだろう。

 それほど、慎重にならなければならない事柄であることは理解しているようだ。

 シレアたちは舞台の端にいるような形で評議長の前に並び、何を質問されるのかと彼の言葉を待っていた。

 すると、暗いローブを来た背の低い影が数名、おぼつかない足取りで降りてくる。

 シレアの前で立ち止まり、目深に被ったフード越しに見上げる。

 シレアの胸くらいの高さに頭がある。

 魔導師と呼ばれる者たちだ。

 それを、やや遠巻きに眺めていたセルナクスの隣にマノサクスが現れる。
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