穢れなき獣の涙
「なんだ、興味があるのか」
「うん、まあね」
この二人は幼少からの友人で、共に剣の腕を競った仲だ。
セルナクスは評議会の近衛隊長として任に就いたが、マノサクスはその流れには乗らなかった。
戦士ならば誰でも評議会の兵士になる事に憧れる。
マノサクスの腕前からしても評議長、直属の近衛になってもおかしくはないのに、兵士にならなかった幼なじみの決断を今でも疑問に思っている。
一人の魔導師が一歩、進み出てシレアの瞳を見つめる。
しばらく言葉はなかったが、おもむろに魔導師が口を開いた。
「あなたは、自分のことをどこまで知っているのです」
「何も」
返された言葉に、女性と思われる魔導師は声もなく目を伏せた。
シレアの声色からは何の感情も読み取れなくて、やや困惑している様子だ。
次の言葉を紡ぐため、頭を上げたそのとき──
「なんじゃ!?」
辺りに響き渡る角笛の音は、何かの異変を示していた。
「うん、まあね」
この二人は幼少からの友人で、共に剣の腕を競った仲だ。
セルナクスは評議会の近衛隊長として任に就いたが、マノサクスはその流れには乗らなかった。
戦士ならば誰でも評議会の兵士になる事に憧れる。
マノサクスの腕前からしても評議長、直属の近衛になってもおかしくはないのに、兵士にならなかった幼なじみの決断を今でも疑問に思っている。
一人の魔導師が一歩、進み出てシレアの瞳を見つめる。
しばらく言葉はなかったが、おもむろに魔導師が口を開いた。
「あなたは、自分のことをどこまで知っているのです」
「何も」
返された言葉に、女性と思われる魔導師は声もなく目を伏せた。
シレアの声色からは何の感情も読み取れなくて、やや困惑している様子だ。
次の言葉を紡ぐため、頭を上げたそのとき──
「なんじゃ!?」
辺りに響き渡る角笛の音は、何かの異変を示していた。