穢れなき獣の涙
「襲撃だ!」

 セルナクスとマクサクスは剣を抜き、評議長を守るために駆け寄る。

「レイノムス様! 城内へ!」

 評議長を護衛たちに任せて広場の外へ飛び出る。

 角笛の音は鳴り止まず、二人は剣を構えたまま周囲を警戒した。

「じいちゃん……。あれ、なに?」

 一同の視界に入った無数の小さな影は徐々に大きくなり、その姿を知らしめる。

 それは、コウモリに似た翼をはばたかせ、石のような肌を持つ醜い容姿のモンスター──

「ガーゴイルじゃ!」

 洞窟や古い城などに棲み着き、石像になりすまして近づいてきた獲物を捕らえる怪物。

 そのためか肌の色や質感は硬く、無機質に感じられる。

 つまり、剣の刃はまず通らない。

 打撃か魔法で倒すしかない。

「なんて厄介な!」

 アレサは苦々しく片目を眇めた。

 剣と同じく、通常の弓矢はほとんど通用しない。

「何匹いるんだよ!」

 仲間に補助魔法をかけながらヤオーツェが叫び、ユラウスとシレアは攻撃魔法を駆使して落としていく。
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