穢れなき獣の涙
──数日ほどして、荒れた大地にぽつんと佇む一軒の家を視界に捉える。
大した造りではないが、厳しい大地でそれなりの頑丈さと断熱性には優れているのかもしれない。
ミシヒシから降りたシレアは土台に目を留める。
そこには、何やら見慣れない植物が建物を守るようにびっしりと生えていた。
ユラウスもアレサも長く生きているが、初めて見る植物だった。
それはツタなのか柱に幾重にも絡みつき、赤い棘(とげ)で威嚇するように毒々しい。
葉には青白い筋が走っていて、自然界にはいそうにない見た目をしていた。
「錬金術から生まれたものか?」
アレサは眉を寄せ、玄関に向かう一同のあとを追った。
扉の前で立ち止まると、ユラウスはゆっくり建物を見上げて不思議な文様の描かれたドアを叩く。
「どなたか、おられるか?」