穢れなき獣の涙
「待ちますか」

 そうこうしているうちに、玄関の扉が開く音がした。

 定期的に聞こえていた足音は部屋のトアが開いている事をいぶかしげに感じたのか、書斎にたどり着く前にぴたりと止まる。

 再び鳴った足音が部屋の前に到着すると、ずらりと並んだ面々に少し驚きながらも、その人物は目深にかぶったフードを脱いで薄く笑んだ。

「これはこれは」

 客人とは珍しい。

 ユラウスたちを一瞥してまわり、敵意がないことを確認して燭台の蝋燭に火を灯す。

 明るくなった室内は普段、人を寄せ付けていないせいか、積もった埃が舞い上がりアレサは軽く手を振って不快感を示した。

「勝手に入って失礼した。おぬしが錬金術師のマイナイか?」

 最年長であるユラウスがまず口を開く。

 彼が古の民だと気がついたのか、男の瞳が多少の好奇心を見せた。
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