穢れなき獣の涙
「合成生物?」

 眉を寄せ、ユラウスは聞き返した。

 世界の探求者たる錬金術師は、手にした技術で完全なる生命を造り出すことを夢見ていた。

その手始めとして、存在している生物を研究する。

 その過程にあるのは、異なる生物同士をつなぎ合わせるものだ。

 彼らが造り出した合成生物が逃げだし、増えたモンスターがキメラとも言われているが真実は定かではない。

「何人もの錬金術師を雇い、それに通ずる研究をさせていた」

 そうして合成生物はある程度の成功は遂げたが、どれも寿命は短かった。

そんなことを繰り返しているうちに、領主は踏み込んではならない命の根源に触れようとしたのだ。

「錬金術の神髄──生命の精製だ」

「なんじゃと!?」

 ユラウスは驚愕に目を見開き、椅子を鳴らす。

「ホムンクルスでは領主は満足しなかった。当然だろう、あんなものは命のまがい物だ」

 錬金術で造られる生命──フラスコの中でしか生きられず、寿命はわずか数日。そんなものに、なんの魅力を感じるだろうか。
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