穢れなき獣の涙
「合成生物でもなく、フラスコの小人でもなく。求めるものは、完全なる生命を持つ生き物」

 生命への探求心は留まるところを知らず、常に湧き上がる疑問に自問自答を繰り返す。

「そうして幾月も費やし、あるひとつの答えが導き出された」

 男は得意げに人差し指を立てて口角を吊り上げる。

「生命の精製には、より強い意思のこもったものが必要なのだ」

 強いエネルギーが込められた生命の一部。

それらは少しずつ集められ、実験が続けられた。

「強い意思? エネルギーじゃと?」

「生命には魂が必要だ。それ自体を否定する者もいるが、私はそうは思わない」

 魂というものの存在がなにかを理解するのも説明するのも難しい。

しかれど、それがあることは明白だろう。

 ならば、生命となる器にその魂を引き寄せなければならない。

「一体、何を集めたのじゃ」

「主に血をね。あとは毛髪だったり爪だったり、とにかく生物から採取したものならなんでも」
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