穢れなき獣の涙
「あれだろ、オレたちが嫌いにならないか気にしてたんだろ」

「そうなのかね?」

 ユラウスは、しれっと発したマノサクスを一瞥しシレアに顔を向けた。

青年はその問いかけに目を伏せる。

「え、どういうこと?」

 まだ話が飲み込めないヤオーツェは首をかしげて一同を見やった。

「シレアがこのおっさんに造られたってこと」

「えっ!? なにそれ!?」

 マノサクスの説明に目を丸くする。

「不可思議な存在には誰しも敬遠するものだ」

「そんなの、オイラたちにあるわけないだろ」

 ヤオーツェは、よく解らないながらも声を上げる。

まだ短い付き合いだが、シレアが信頼できる人間であることには変わりがない。

「我らをみくびってもらっては困る」

「わしらを馬鹿にするでないわい」

 彼の言葉に仲間たちは半ば憤りを感じ、それぞれに反応を見せた。

 しかし、マノサクスだけはその輪のなかに入れない。

当然だろう、仲間になって間もない彼に親身になれという方が無理な話だ。
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