穢れなき獣の涙
──たわいもない話をしながら旅をして数日が過ぎる。
幾分かは若干の暖かさを感じつつも、真上の太陽を一瞥したあとさして変わらない風景に溜め息を吐く。
「町はまだかなあ」
「地図が正しいならば、あと数日で到着するだろう」
「うん?」
シレアはふと、異様な気配の接近に気がつき、馬の脚を止める。
「どうした?」
ユラウスが問いかけた刹那、大きな羽音と共に黒い影が頭上を素早く通り過ぎたかと思うと目の前にモンスターが現れた。
体長は七メートルほどもあり、深い緑の肌はまだらでコウモリのような翼とトカゲに似たその風貌は──
「アシッドドラゴン!?」
その異様な風貌と存在感に、アレサたちの馬は恐怖に高くいなないた。
ヤオーツェのスワンプドラゴンは遠い同族だからか、動きに動揺が見て取れる。