穢れなき獣の涙
 シレアはその様子を見てミシヒシの手綱を引き、アレサたちからさらに遠ざかる。

 そのとき詠唱が完了し、女の背後から真っ赤に燃え上がった大きな岩がシレアたちに降り注いだ。

「やはり、狙いはシレアか!」

「流星雨(メテオスワーム)!?」

「かなり強力だな」

 シレアは慌てるヤオーツェに応え、意外と足の早いミシヒシを繰る。

 アレサたちは応戦しようとするものの、アシッドドラゴンから毒の息が放たれて身動きが取れない。

 女が再び詠唱を始めると、シレアも何かを口の中で唱え始めた。

「なんの魔法?」

 ヤオーツェは振り飛ばされないように必死に抱きつきながら、聞き慣れないシレアの言葉に首をかしげた。

「もしやおぬし!?」

 ほぼ同時に女とシレアの詠唱が完了し流星雨(メテオスワーム)に備えていたユラウスは、その耳に飛び込んできたシレアの魔法に声を上げた。
< 303 / 464 >

この作品をシェア

pagetop