穢れなき獣の涙
◆第十章-見えた敵-

*可愛い人々


「──っう」

 意識を取り戻したアレサは頭を振って体を起こした。

 肌に伝わる空気から、今までいた場所ではないのだと解る。

「ここは」

 眼前に広がる景色に息を呑む──そこには紛れもなく、青々とした草原が見渡す限り続いていた。

 晴れた空にはトンビが舞い、もうしばらくすれば太陽が世界を夕闇へ誘う頃合いだ。

「みんな、無事か?」

 次々と目を覚ます仲間たちに声をかける。

「ここはどこじゃ?」

「シャグレナ大陸でないことは確かですね」

「ミシヒシー! こらー!」

 ヤオーツェはパニックを起こしているスワンプドラゴンを追いかけ、ユラウスがそれを横目にしつつシレアに歩み寄った。

「あの魔法をどこで覚えたのじゃ」

「マイナイのデスクにあった紙に書かれていた」

「あの短時間で覚えたというのか!?」

 無表情に答えたシレアに目を丸くした。

 アタラクトは最上級魔法だったはず。

 なんという習得力だ。
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