穢れなき獣の涙
 肉も食べない訳ではないが大抵は釣った魚の肉などで、獣の肉は手に入れば幸運くらいにしか考えていない。

 ──そうして新たな目的地を定めた一行は、南に進路を取った。

 コルコル族の集落までは、ゆっくり行けばおよそ三日ほどの距離となる。

 つい、さき程までの寒さが嘘のように温かい大気が全身を包んでいる。

 豊かな大地に茂る短い草花、遠方にかすかな森の影、山々は白い冠に飾られ、彼らの目を楽しませた。

 そんななか、ユラウスの表情はやや険しい。

 意識を失っている間に、新たな仲間の影が映し出されたのだ。

 しかし──

「こいつはちと、難しいのう」

 困惑した面持ちで溜息交じりに口の中でつぶやいた。







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