穢れなき獣の涙

 ──それから夜を二つほどまたぐと、前方に立ち並ぶまばらな木々の間に赤や緑の屋根が見えた。

 目指していたコルコル族の集落だ。

 向こうもこちらを見つけたらしく、にわかに慌ただしくなっている。

 近づいてくるシレアたちを十人ほどが並んで見つめていた。

 目の前まで来ると、一人のコルコル族が一歩出て大きく見上げた。

「ようこそ、コルコル族の集落へ」

 尖った口で発する。

 声から窺うに、どうやら男性のようだ。

 二足歩行の犬といった風貌の彼らは、物珍しそうに訪れた一行を眺めた。

 それも無理もない、この大陸には住んでいない種族ばかりの集まりなのだから。

 コルレアス大陸には主に獣人族が住んでいて、他にも猫や鹿に似た種族が存在する。

 数は多くはないが、どの種族も温和でそのため諍(いさか)いも少ない。
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