穢れなき獣の涙
「え!? それは大変でしたね。ウェサシスカはどうですか?」

 シャグレナ大陸については広く知られている。

 行ったことは無いにしても、ねぎらいの言葉はかけてしかるべきなのだろう。

「うん、相変わらずだよ」

「そうですか。旅のお話を聞きたいところですがお疲れでしょう。今日はゆっくり休んでください」

「ありがとう」

 アレサが丁寧に礼を述べると、レキナも同じく頭を軽く下げて家に戻っていった。

「さて、これからどうしますか? わたしはすぐにでもエナスケアに戻った方がいいと思いますが」

「うむ。それがのう……」

「どうしたの?」

「実はの」

 神妙な面持ちのユラウスに怪訝な表情を浮かべ、彼の口から綴(つづ)られる言葉に耳を傾けた──

「なんですって? コルコル族の中に仲間が?」

 ユラウスの話を聞いたアレサは、さすがに驚かずにはいられなかった。

 コルコル族の力は大したものではなく、粘り強さも体力もある方ではない。
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