穢れなき獣の涙
──楽しい晩餐を終え、レキナが食後の酒と飲み物を一同に振る舞う。
「確か、コルコル族には魔術師(メイジ)がおったな」
酒を口に含み、美味いなと顔をほころばせて問いかける。
コルコル族の魔法は儀式めいたものが多いため、人間の魔法使い(ウィザート)とは区別される。
魔法においても、この大陸の平穏な環境と、彼らの温厚な性格が如実に表れている。
「はい。何人かはいます」
「転送魔法円(ポータル)もあるじゃろう」
「もちろんあります。我々には使えませんが」
「なんで?」
コルコル族に慣れてきたヤオーツェは首をかしげた。
「移動の魔法は、双方の場所を見聞きしていないと無理なんじゃよ」
「我々は他の大陸に行ったことが無いので──」
「放浪者(アウトロー)はいないの?」
「コルコル族はあまり旅をしないんじゃ」
「ふ~ん」