穢れなき獣の涙
「幸い、我々の三人が魔法を使える。それだけいれば、全員を連れてエナスケアに戻れるわい」

「シレアが使った魔法は? ここまでひとっ飛びだったじゃん」

「馬鹿を言うでない。あれは運が良かっただけじゃ。そもそも、あれは重さを操るもので移動の魔法ではない」

「制御もまだのようでしたしね」

 ちくりとした視線がシレアに向けられる。

 つい好奇心で使ってしまった手前、何も言えない。

 運良くコルレアスに飛ばされたとはいえ、次はどうなるか解らない。

 多用するのは控えた方がよさそうだ。

「もう発たれるのですか?」

「うむ、ちと急ぎの用があっての」

「そうですか……。旅のお話が聞けると、みんな楽しみにしていたのですが」

「すまんのう」

「そんなに急ぐって、どんな用事?」

 モルシャは身を乗り出して尋ねた。
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