穢れなき獣の涙
「どのみち、焦ったところでどうにもならない。彼女は充分に肝が据わっている」

 シレアの言葉に、アレサは溜息を吐きつつモルシャを見つめた。

 他の大陸や種族についても知っているのは有り難いけれど、いざというとき彼女を守り通せる自信はない。

「あの、モルシャがその敵と戦うってことなんですか?」

 レキナは不安げに口を開いた。

「そういうことよね」

「君は、自分の立場を解っているのかい?」

 少しきつい口調に、モルシャはまた機嫌を悪くする。

「何が言いたいの」

「どんな敵かも解らないのに、彼らの仲間になるんだよ!? 僕たちが敵う相手だと思うのかい!?」

 声を荒げたレキナにユラウスたちは目を丸くした。

 しかし、モルシャはそんなレキナを意に介さず、面倒そうに耳をかく。
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