穢れなき獣の涙
「あのねぇ……。ちゃんと聞いてた? どこにいても一緒なの」

「モルシャ、でもっ」

「どこにいたって、逃げ場なんか無いのよ」

 だったら、あたしは戦うわ。

「モルシャ!」

「ただ黙ってやられるのなんていやよ。戦える場所があるのなら、願ったりだわ」

 これほどに強い精神が宿っていようとは──その勇ましい姿に今までのコルコル族へのイメージを恥じ、改めて驚かされた。

「長らく生きておるが、コルコル族がここまで強かったとはのう」

「何よそれ? 失礼しちゃうわね」

「いやいや、すまぬ」

 ──そんな和やかな雰囲気から一変、重たい空気が辺りに充満する。

「なんです?」

 ユラウスたちだけでなく、モルシャまでもが身構えているのを見たレキナは首をかしげた。
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