穢れなき獣の涙
「ひっ!?」

 しかしすぐ、眼前の空間が黒く染められていくのを目の当たりにして身をすくめた。

[そうまで我にたて突くのか。弱き者どもよ]

「ようやく敵のお出ましか」

 強気に発したアレサだが、浮かぶ黒い影に背筋は凍り付いていた。

「おぬしの目的はなんじゃ」

[この世は我に支配されるべき]

 カデット・ブルーの瞳だけが闇のなかで輝き、問いかけたユラウスを睨み付ける。

「何故だ」

[この世界はあまりにも曖昧に歩みを進めている]

 威圧的な瞳がシレアに向けられたとき、ほんの少しだが柔らかくなったようにも感じられた。

[我がそれを正し、この世界を上位に導く]

「そのために他者を傷つけるというのか!」

 それはあまりにも理不尽だとアレサは拳を強く握った。
< 330 / 464 >

この作品をシェア

pagetop