穢れなき獣の涙
「あれはリンドブルム山脈か」

 近くに見える山脈にアレサが問いかけ、ユラウスたちは見慣れない風景に辺りを見回した。

「そうだ」

 シレアはそれに答えながら、目を白黒させている白髪の老人に歩み寄る。

「久しいな」

「戻ってきて早々に騒がしいのう。彼らはなんじゃ」

 シレアの背後にいるユラウスたちに眉を寄せる。

 見慣れない動物までいて警戒しない方がおかしい。

「説明はあとだ」

 挨拶もそこそこにアレサたちを自分の家に案内した。




 ──家の中は旅に出たときと変わらず、綺麗に整頓されていて埃すらない。

 一人暮らしのシレアは手先が器用なこともあり、大体なんでも一人でこなしていた。

「おなごどもが入れ替わりに掃除をかかしとらんよ」

 もう何年も帰ってはいないのにといぶかしげにしていたレシアに長老が答える。

 なるほどそうかと返すも、どうして掃除をしてくれているのだろうかと小首をかしげた。
< 339 / 464 >

この作品をシェア

pagetop