穢れなき獣の涙
 そうして一同をダイニングに促し、飲み物を配り終えて落ち着いたところで口を開く。

「長老のディナスだ」

 暖炉のそばの椅子に腰掛けている白髪の老人を示して紹介した。

「お初にお目にかかる。わしはユラウス」

 それから例の如く仲間たちの自己紹介が始まる。

 終わったところでシレアはユラウスを示し、

「彼はロデュウだ」

「古の民? ほほう」

 怪訝な表情で一同を眺めていたディナスが驚きの声を上げる。

 なんとも種族が色々いるなかで古の民もいるとは、どんな旅をしてきたのか。

「彼がおぬしを?」

「そうだ」

 確認し、ディナスに向き直る。

「おぬしには初めから説明しなくてはならんの」

 ユラウスは重々しく語り始める──

 古の民は、これから訪れるかもしれない暗黒の時代と見えない敵、それに立ち向かわなければならない運命を背負った者たちの事を綴った。
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