穢れなき獣の涙
 驚かされる内容だが、長老は小さく唸りつつも、その表情にはどこかしら納得した感が見受けられる。

 ユラウスが話しを終えると、ディナスは一同をゆっくりと一瞥していった。

「よもや、シレアがの。王都でおぬしを拾ってから色々あったが、このような運命が待っていようとは」

 育ての情が垣間見える声色に、ユラウスは目を細めた。

 ユラウスは長く生きてはいるけれど、子どもをもうけたことがない。

 親の愛情、子の愛情というものがよく解らないながらも、二人の間にはそれに似たものがあるのだと感じられた。

「そのことで話がある」

「なんじゃい」

 シレアはユラウスたちに目をやり、

「少し外してくれないか」

「そうじゃな。二人だけで話した方がよいじゃろう」

「ずいぶんと物々しいの」

 全員を外に出してまで話すことなどあるのかと眉を寄せる。

「長老」

「なんじゃ」

 このように呼ぶときは大抵、大切な話であることが多い。

 シレアの険しい眼差しに、気を引き締めて耳を傾けた。


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