穢れなき獣の涙

「シレアが!?」

 ユラウスの説明に、モルシャは目をぎょろつかせてシレアを見つめた。

「うっそ、ぜんぜん分かんない」

 シレアの周りを興味津々でぐるりと回る。

「これこれ」

 率直な反応に、一同は苦笑いを浮かべた。

 シレアもこの件には吹っ切れたのか割り切ったのか、いつものように堂々と無表情にモルシャを見下ろしている。

「つまり、シレアの~で、敵が警戒してるかもってこと?」

 言葉を濁して応えたが、シレアの存在をどう言えばいいのか考えあぐねた結果のものだ。

「シレアの旅を阻止してきているのだ、警戒どころではなかろう」

「それはそうと。本当に、先は見えないのですか」

 アレサの言葉にユラウスは、「うぐっ!?」と声を詰まらせる。

「見えとったら言うとるわい」

 隠す必要なんかあるわけないじゃろうがとすねて見せた。
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