穢れなき獣の涙
「相手の出方を待つしかなさそうですね」

「いい加減、後手に回るのは喜ばしくないが仕方がない」

[奴らは、そなたらの結束を乱そうとしているのだよ]

 のそりとヴァラオムが割って入った。

[空は重々しく闇を創っておる]

 それに呼応するように、人々は心の暗い部分を引きずり出される。

 各々が持つ、ひび割れた心とささくれた感情は闇によって膨れあがり、争いが生み出される。

[そうなれば、敵はさらに優位となるであろう]

「最も数が多い人間の心を利用しておるのか」

「人間は欲望に弱く脆い」

「でも、こんなに沢山、増えたのは凄いと思う」

「そうね。欲望が大きな力になっているのは確かだわ」

[それを利用することこそが問題なのだ]

「うむ。そのとおりじゃ」

 みんなの会話を聞きながら、シレアは険しい表情を浮かべていた。
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