穢れなき獣の涙
 赤く煮えたぎる鉄のような熱さと、北の大地のような極寒を併せ持つ怪異な視線が、どこからともなくシレアだけに注がれていた。

 この視線は間違うはずもなく、闇の中で輝いていたカデット・ブルーの瞳のものだ。

 常に感じてきた視線はあれ以来、より強くシレアを見つめるようになっていた。

 それが、憎しみや怒りだけではない、何かをも有しているように感じられてどうにも居心地が悪い。

 何故こうも自分に執着しているのか。

 何がそうさせているのだろうか。

 やはりあのとき、マイナイにしっかりと聞いておくべきだった。

 そうは考えても、何を問えばよかったのか、それが解らなかったのだ。

 生まれた理由も、その方法も聞いてしまったあとに、他に何を質問すればよかったというのか。

 敵が執拗に攻撃を仕掛けてくる理由が解らない時点では、質問の内容すら決めかねる。
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