穢れなき獣の涙
「赤い髪の女だ。とても強いオーラをまとっている」

 やはり、ウェサシスカとシャグレナ大陸で会った女かと苦い表情を浮かべる。

 鋭い眼差しにはシレアへの憎しみが色濃く表れていた。

 見ず知らずの相手に、どんな憎まれ方をしたのかと本人さえも首をかしげる。

「あの女が敵の上部にいるのは確実でしょうね」

 冷静さを取り戻したアレサが応えた。

「うむ、索敵(さくてき)といったところかの」

「あたしの集落も大丈夫なのかしら」

 さすがのモルシャも少々、心配になってきたようだ。

 闘うことを知らない種族が抵抗出来るとは思えない。

「まず主要な街を狙うだろう。戦闘力のない種族や小さな集落を襲ったところで、あまり意味を成さない」

 シレアの話にモルシャたちは安堵の溜め息を吐いた。
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