穢れなき獣の涙
「街を襲うにしても、すぐに拡がる事は無いじゃろう」

「問題は、どう戦うか」

 ぼそりとつぶやいたシレアの言葉に、部屋の空気は重くなる。

 イヴィルモンスターを従えているのだとすれば、どう考えても数で敵う訳もなく、それに対抗しうる絶大な力を持っている訳でもない。

 相手を過小評価できる要素は何一つなく、全体を見渡せない状態での勝機を見い出せる策など見つかろうはずもない。

「そなたが旅をした意味は何かを考えよ」

 背後からかけられた声に振り返ると、見慣れない男が立っていた。

 年の頃は四十代だろうか、腰まであろうかというほど長く伸びた銀の髪に黄金色の瞳は揺るぎなく目尻はきりりと吊り上がり、精悍な顔立ちをしている。

 ずいぶんと親しげに話しかけてきた。

 シレアの知り合いだろうか?
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