穢れなき獣の涙
 それはあたかもシレアにつきまとうように止むことなく、それでも諦めるものかと厚着をして足を動かした。

 視界は真っ白だが足元だけはかろうじて確認出来る。

 あまり無理はしたくないが悠長にしてもいられない。

 ここまで登ると、さすがに生きているものの気配はまるで感じられない。

 不安要素が一つでも減るのは有り難い。

 しかし、その道程はなおも厳しく少しずつ、少しずつ歩く事で十日を要した。

 ここまで時間を費やしたことを思えば、ギャラルに出会ったことは幸運だったかもしれない。

 あの獣の肉がなければ、この先も生きていられたか解らない。
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