穢れなき獣の涙
[そなたがこの時代に産まれたのには、何か意味があるのかもしれぬな]

「そんなものは誰にも無い」

 ただ生まれ、ただ死ぬ──そこに意味を持たせることが良しとは私には思えない。

「意味を持たせれば、それだけのことをしなければならない重みまでをも生み出してしまう。それが生き甲斐となる者たちばかりではない」

 この世の理(ことわり)は、自然の流れを意味している。

 決して、重責を担わせるものではない。

「私は私のすべきことを知り、果たすべきことをやり抜くだけだ」

[実にそなたらしい]

 それ故に、我はそなたに強く魅せられる。

 ヴァラオムは喉の奥から笑みをこぼし、シレアと共にリンドブルム山脈を眺めた。




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