穢れなき獣の涙
 そこから二日経ち、山を登って十二日目──遠方の眼下に広がったのは、岩肌や積雪ではなくまぶしいほどの緑だった。

「頂上か」

 安堵して、今まさに向かおうとしている盆地を見下ろす。

 少しの森と平原、小さな湖が山に囲まれてそこにあった。

 薄い雲が邪魔をして詳細までは確認出来ないけれど、何かの群れがいたように思う。

 あれがカルクカンであればと逸(はや)る気持ちを抑えて山を降りるため、安全な踏み場を探す。

 こちら側は地形が少し緩やかなのか、八日とかからずにふもとに到着した。
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