穢れなき獣の涙
「魔導師の監視すら意に介さなくなったのか」

 アレサは苦々しく舌打ちした。

 敵は思ったよりものんびり屋ではなかったらしい、これほど急速に動き始めるとは予想外だ。

「イヴィルモンスターの動きは最終確認だったのか?」

「そうなんじゃない?」

「オイラ心の準備出来てないよ」

「場所は」

 不安のなか、シレアは静かに問いかけた。

「北の大地──そこに、闇の軍勢が集まりつつあります」

 同じく静かに答えたミレアに一礼をして山脈を見やる。

「行くのか」

 尋ねたユラウスに無言で頷く。

 怖じ気づくことのないシレアに驚いたが、今更なことに口の端を吊り上げる。

 初めから散々煽っておいて何を言っているのかと己に呆れる他はない。

「わしらも準備を始めよう」

 後戻りは出来ない。腹をくくれと自分に言い聞かせた。




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