穢れなき獣の涙
──その夜、アレサは寝付けずに集落の広場で星空を仰いでいた。
[眠れぬのかね]
「ヴァラオム殿」
現れた白いドラゴンを見上げる。
「敵の正体が未だに掴めないのです。不安にもなりましょう」
[多少の予想はしていよう]
その言葉に、アレサは目を眇(すが)める。
「シレアに関係している者か、もしくはシレアと同じ──」
最後まで言い切らずに言葉を切った。
[うむ、皆がそう考えておる。当然、シレア自身もな]
「しかし解りません。敵は、本当にシレアの旅を阻止したかったのでしょうか」
[それは我にも計りかねる処だ]
本気で阻止しようと思えば出来たのではないだろうか。
それはまるで、シレアがどうするのかを見定めているようにも、どこか楽しんでいるようにも感じられた。
自身の持つ力の余裕からか、別の理由があるのか──