穢れなき獣の涙
──シャグレナ大陸
「何をしている」
マイナイは顔をしかめて問いかけた。
家の周囲が何やら騒がしいと思ったら、魔導師たちが忙しなく何かの作業をしていた。
「マイナイ様、ご機嫌麗しく」
一人が彼に歩み寄り、丁寧に腰を折る。
「何が始まるんだね」
「マイナイ様も大気の異変にお気づきかと思われますが、それに対処するべく、とある一同がお見えになります」
「それで何故、私の敷地なのだね」
「マイナイ様の知る方だそうです」
「む、そうか」
全てを聞かずに遠い地平線を眺める。
寒々とした空には厚い雲がたちこめ、いかにもこれから何かが起きそうな様相を呈している。
「面倒な」
つぶやいて、けだるい空を一瞥したあと扉を閉じた──