穢れなき獣の涙
──準備を済ませたシレアたちは、集落の外に設置された転送魔法円(ポータル)に向かう。
空の青さと風のさわやかさに朝露が、清々しく神妙な面持ちの一同を迎えた。
事前に描かれていた大きな魔法円の中に入ると、周囲を魔導師と魔法使い(ウィザード)が取り囲む。
シレアたちを転送するためにウェサシスカから来てくれたのだ。
「ミシヒシ、大丈夫かな」
心配そうに集落を見やるヤオーツェの肩をアレサが叩く。
馬は優位に立てる条件の一つだが、馬を守る余裕があるかどうかも解らない状況では返って不利になる可能性がある。
軍馬ならともかく、移動のための馬では戦闘ではあまり持たない。
長老は一同を見回し、シレアに向き直る。
いつもと変わりない表情に笑みをこぼして目を吊り上げた。
「シレア、あのときのことを覚えているか」
十一のとき、罪を負わされそうになったときのことを。
「忘れてはいない」
「おぬしは、あとになってそれを正したな」