穢れなき獣の涙
 ヴァラオムがそれを知った時にはすでに遅く、竜人たちは生まれたネルサに歓喜していた。

[多くのものを犠牲にしてまで、やらなければならない事だったのか]

 彼らが失敗とみなした子らは崖下に投げ落とされ、反対した者たちはことごとく追い払われ、異様な空気が立ちこめたその場で立ち尽くした。

 ドラゴンの血を色濃く受け継いだネルサは強大な力をその身に宿し、安閑(あんかん)と成長していった。

[しかし、ネルサが成長していくなかで彼らは気がついたのだよ]

 ネルサの意思は彼らの理想とは相容れぬものだという事に──

「栄光など蘇らせたところで何になる。そんなもののために俺は生まれたんじゃない」

 世界を支配すれば全てが済む話じゃないか。

 見せた笑みはどす黒く、そこで初めて自分たちの過ちに気がついた。

 求めていたものは無残にも壊され、眼前には悪神だけが残った。

 彼らは犯した過ちを正すべく、ネルサの封印を決断した。
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