穢れなき獣の涙
[数を減らした彼らは、さらにその半数を費やしてネルサを封印した]

 大きな、とても大きな報いだ。

[彼を殺さなかったのは、せめてもの良心なのだろう。しかし──]

 殺すべきだった。

 ヴァラオムは言い放ち、ネルサを睨み付ける。

「もう遅い。俺は力を取り戻し、さらなる力を手に入れた」

 不敵に笑い、従えているモンスターどもを示した。

[そんなものはまやかしだ!]

 そう叫ぶヴァラオムにさしたる関心を示さず、ネルサはシレアに視線を移した。

[そのお前が何故(なにゆえ)、それほどまでにシレアを気にかける]

 ヴァラオムはシレアを隠すように一歩、前に出る。

「貴様こそ、それだけ近くにいてどうして気がつかない」

 返された言葉に目を眇める。

「確かに造り出されたという意味では、そいつと俺は同じだ。それに対する思いもある。だが、同じなのはそこだけじゃあない」

[何を言って──もしや!?]

 目を見開きシレアに振り返る。
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