穢れなき獣の涙
[ケエェー!]

 すると周囲に何体もいたのか、それらが大きく鳴いて一斉に離れていった。

 驚きつつも、逃げたものを確認して目を丸くした。

「これは」

 カルクカンの群が自分を取り囲んでいたのだ。

 初めて見る数に言葉を詰まらせる。

 カルクカンは馬と同様に、人によく慣れると聞いた事がある。

 とはいえ、まさかここまでとはと驚嘆し、眼前の光景をしばらく眺めていた。

 すらりと伸びた尾はしなやかなムチのように動き、艶を帯びた肌は太陽に照らされて色とりどりの光を放つ。

 まるで夢の中にいるような感覚に思わず溜息が漏れた。

 そうしてシレアは、まずは体力を回復させるためにカルクカンを眺めながら体を安める事にした。

 森には食べられる木の実が豊富にあり、水も充分にある。

 これなら回復もすぐだろう。



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