穢れなき獣の涙
*針の穴から光は差し込むか
ヴァラオムは翼をはばたかせてさっと飛び立ち、シレアたちから離れた場所で尾や炎の息(ブレス)でオークを蹴散らす。
シレア、アレサ、マノサクスは接近戦闘に向かないユラウス、ヤオーツェ、モルシャを内側に隠し丸い陣形を組み、襲いかかるモンスターを確実に一体ずつ倒していった。
仲間を殺せば諦めもつくだろう、ネルサは喉の奥から笑みを絞り出した。
今は希望だなんだとそそのかされているが、目の前で奴らが殺されれば気も変わる。
高をくくっていたネルサの耳に、微かな声が聞こえた。
「詠唱?」
よく見ると、ユラウスが何かを唱えている。
一人で何が出来るのかと鼻で笑った刹那、
「ぬ? 貴様ら!」
シレアとアレサ、ヤオーツェも同じ言葉を唱えている事に気がついた。
この魔法は──
「アタラクトだと!?」