穢れなき獣の涙
 男は彼を見つけると、白銀の胸当て鎧(ブレスト・プレート)に長い戦斧、赤茶けた短髪を揺らし濃いグレーの細い目を向けて豪快な口元に笑みを浮かべた。

「エンドルフ」

 懐かしい友の姿に目を丸くして駆け寄る。

「びっくりしたぜ。魔導師なんて初めて見た」

「魔導師?」

 モンスターの襲撃に王都は陥落したが、奪還する作戦を練っていたエンドルフたちの元に魔導師が突如、姿を現した。

 そうしていま何が起こっているのかを語り、北の大陸で戦う者たちを助けて欲しいと願い出た。

「さすがにすぐに信用するのは難しかったけどよ。王都を攻め落とされてる身としてはね」

 肩をすくめる。

「んで、あっちこっちの町で魔導師たちが頼み込んでるんだと」

 ミレアは、レイノムスに旅をしたいと願い出た。

 それは転送魔法円(ポータル)を作成するためのものだった。


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