穢れなき獣の涙
 シルヴィアは風に揺れるシルヴァブロンドの髪を見やり、毒気を抜かれたようにだらりと剣を下げる。

「あなたは美しい。わたしのように穢れてはいない」

 口の中でつぶやき、再び鋭く見据えると剣を振り上げてシレアに挑みかかった。

 解っている、憎んだところで何も変わらない。

 けれど、憎まずにはいられなかった。

 そうでなければ生きて行くことが出来なかった。

 あなたはわたしのそんな醜い心を受け止めている、解っているんだ。

「解っている。憎むことと、誰かを傷つけることは──違うのだということは」

 本当に受け止めてくれる人が誰なのか、わたしは知っている。

 けれども──

「もう、あと戻りはできない」

「そうか」

 シレアは低く応えて剣を構える。
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