穢れなき獣の涙
 鋭利に向けられた剣先よりも、その射抜く視線にシルヴィアは身震いを覚えた。

「何故だ」

 シレアを一心に見つめ、口の中でこぼす。

「何故わたしは生まれた」

 ただ捨てられるだけの命にどうして生まれた。

 答えなど求めてはいない、ただこの理不尽さが許せない。

「運が悪かったのだ」と言われるのだけは嫌だ。

「わたしは、ただ運が悪いというだけで、暗闇に閉じこめられ、心を殺されていたのか? わたしという存在は、なんなのだ!」

 引き裂かれるほどの叫びをあげ、刃を交える手は震えて涙が頬を伝う。

 それでもシレアは静かにシルヴィアを見つめていた。

「外に出ることが出来たなら、何故そこから新たな道を見い出さなかった」

「っ!?」
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