穢れなき獣の涙
 彼らには、「弱っている仲間を守る」という習性があったのだ。

 人というものに触れていないカルクカンたちには、シレアが仲間に見えたのかもしれない。

 あるいはここを訪れた人間もまた、カルクカンと仲良くなれたのかもしれない。

 体力も回復し、シレアは一旦集落に戻るためソーズワースと名付けたカルクカンに鞍(くら)を乗せる。

 刻一刻と近づく別れの時を感じているのか、カルクカンたちはシレアとソーズワースを遠くから静かに眺めていた。

 名残惜しそうに小さく鳴き始め、それはやがて大きくなって輪唱のごとく草原に響き渡る。

 それを背に、シレアはソーズワースと共にそびえ立つ山脈に再び足を向けた。




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