穢れなき獣の涙
「愚か者どもが」

 刹那、辺りが静まりかえった。直後、すさまじい風が渦を巻く。

「これは!?」

 さらに一瞬で凪が戻り、どこからともなく響く甲高い音が辺りを満たした。

「なに? この音」

「一体、どこから」

 音の出所を探ると、それは目の前にいる人物から放たれていた。

「シレア!?」

 アレサは無表情でネルサを見つめるシレアに目を見開いた。

 これまでのシレアとは明らかに雰囲気が違っている。

 帯黄緑色(たいおうりょくしょく)の瞳は妖しく輝き、その身に鋭い風を孕(はら)み、シルヴァブロンドの髪は美しくその流れに舞う。
「チッ」

 ネルサは苦々しく舌打ちすると、銀色の鎧を具現化させ剣を強く握りしめる。

「この気は」

 ユラウスは、シレアから流れてくるエネルギーに記憶の渦に埋もれた郷愁(きょうしゅう)を見た。
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