穢れなき獣の涙
──ヴァラオムは静かに口を開いた。
[自然を愛し、世界をめぐっていた彼らには、その力を使う理由がなかったのだよ]
「でも、絶滅しているわ」
[どんなに強大な力を持っていようとも、滅びは避けられぬ]
それは自然淘汰に他ならない。
[彼らはそれを重々、承知していたのだ]
世界の次の段階──彼らはそれを素直に受け入れた。
「そんな!」
[己のために世界を犠牲にはしたくなかったのだろう]
それほどに、この世界を愛していた。
「本当にそれでよかったの?」
ユラウスが言ったように、彼らも少しくらい抗っても良かったんじゃないの。
[力を持つドラゴンが抗えば、世界は大きな傷を負うことになる]
古の民とは何もかもが違いすぎる。
「滅びの全部が悪じゃない。解ってるけど!」