穢れなき獣の涙

 ──ネルサは不気味な笑みを貼り付けてシレアの剣を強く押し込んでいく。

「貴様はすでに人ではない。それでも俺に抗うというのか」

 その力が目覚めたいま、残されていた人としての部分は消え去ったというのに!

「私はただ己のしたいことをしているだけだ」

「それが俺に仇なす理由とは笑える!」

 力の差を見せつけるようにさらに力を込める。

「この世界は自由であらねばならない」

 見下ろすカデット・ブルーの瞳を見つめ、シレアは凜として返した。

「自由であったために、自由過ぎたために貴様や俺のような存在が造られたのだぞ。それでもいいと言うのか」

「重要なのはその部分ではない」

 それぞれの種は選択を続けていく、そのふるまいが世界の先を決める。
< 441 / 464 >

この作品をシェア

pagetop