穢れなき獣の涙
「私やお前という存在は、この世界の一部でしかない」

 造られたかどうかなど、私にとってはどうでも良いことだ。

「そうして嘆きながら死んだ者たちにも同じことが言えるのか」

「だからといって世界を大幅に変えようとすれば、多くの者たちを苦しめることになる」

「だったら自分は我慢するってか! ハッ、とんだ馬鹿だな」

「私の心を揺さぶろうとしても無駄だ」

 淡々と無表情に発したシレアに舌打ちし、鋭く睨み付けた。

「俺に従わない者など必要ない」

 ことごとく滅ぼしてくれる!

 ネルサはシレアの剣を払い、全身に力を込める。

[いかん、離れろ! 本来の姿を現すぞ!]

 黒い霧がネルサの周囲にたちこめ、その姿を隠した。
< 442 / 464 >

この作品をシェア

pagetop